最高裁判所第一小法廷 昭和30年(オ)821号 判決
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〔要旨〕建物明渡請求訴訟の被告が、自己の占有を否定し使用人として建物に居住するにすぎないと主張する場合、使用主に建物占有の正権原がないことを理由として明渡を命じたときは、理由不備の違法がある。
〔説明〕建物明渡請求訴訟の被告(上告人)等が被上告人(原告)主張の建物の部分を占拠していることを認めるが、賃借人である組合の使用人として建物の管理をしているもので、いずれも独立の占有を有しないと主張した。一審はこれに対し、証拠により被告等がそれぞれ独立の占有を有する事実を確定して、各自の占有部分の明渡を命じたが、原審は「控訴人等は控訴組合の使用人としていずれも本件建物に対する控訴組合の占有権原に基いてそれぞれ本件建物部分を占有する旨を主張するのであるが、すでに控訴組合が本件建物を占有するについて被控訴人に対抗し得べき権原を有するものと認められない以上、その占有を被控訴人に対抗することができない」と判示して第一審判決の結論を維持した。右の判示を違法とする上告理由に対し本判決は次のように判示する。「原判決が引用する第一審判決事実摘示によれば、上告人甲は上告組合の理事であり本所支部長として建物の一部を支部の事務所に使用しているものであり、同乙、丙は上告組合の使用人として建物の受理をしているので、いずれも組合とは別に個人として独立の占有を有するものではないというのである。しかるに、原判決は、所論摘示のごとく判示し同上告人等に対しそれぞれ本件建物の判示占拠部分の明渡を命じた第一審判決を是認したものである。されば、原判決は、占有機関であると主張する者に対し明渡を命ずるについて理由を備えない違法があり、この違法は同上告人等に対する原判決に影響を反ぼすものであつて同判決部分は破棄を免れない」というのである。因みに本判示は使用人として建物を占拠するにすぎないような場合は、使用主の占有補助者として独立の占有を認めず、これに対する明渡の請求を認めるべきではないとする見解を前提とするものの如く、又この見解の根拠は、これらの者に対する訴訟の進行は、訴訟経済上その必要を認めるべきではないとするに求むべきであろうと思われる。
(大場調査官)